よくネット質問サイトで、元恋人を忘れられずにいる人、片思いしている人を諦められない人に
「アンタはストーカーだ」とか
「そのままだとストーカーとして逮捕されますよ」と回答する人たちがいます。
けれどその相談の中に書かれている行動のほとんどが、
「相手の受取方次第で、ストーカーと言われたり言われなかったりするのでは?」
というような内容のものばかりだと感じていました。
そもそも「その程度でストーカー呼ばわりされたら、積極的なアプローチは全部ストーカーになるだろ?」ってことでも
「相手が嫌がっていればストーカーだ」
と思っている人が多いですね。
先日の42歳ストーカー女性として逮捕された方は、何故あんなニュースになったんだろう?ということについても、ちょっと疑問に思っています。
報道されるかどうかの境目は、明確なルールは無いそうです。
3日間で80通を超えるショートメールを一方的に送りつけた、3年以上会社付近をうろついて男性の姿を見ていた。
確かに想像するとゾッとしますが、女性が公務員だったならともかく、無職なのに顔や名前を出し、親兄弟までインタビューに答える程の大事件だったのでしょうか?
私自身この事件に興味を持ったので、やはり報道としては「40代女性が20代男性にストーカー行為をした」というのが、面白いネタだと思ったメディアがあったということかと思います。
こういう年齢差のあるストーカー行為と、同性同士のストーカー行為は、事件として報道されやすいですね。
私もやはり興味を持ってしまいますし…
今改めて男性同士のストーカーのニュースを記事を読み返したら、こちらは元同僚だけあって直接LINEや電話をしていたというのが大きい気がします。
ただ、こちらは本名や住所は報道されていても、顔写真は出ていません。
なのに、何故中村弘美さんの顔写真はガンガンに報道されたのでしょうか?
姫路市役所の元属託職員だった女性は、名前も顔写真も報道されていませんでした。
誰もインタビューに答えたり、写真を渡したりしなかったから?
被害者がモザイク付きでインタビューに答えていた中村弘美さんと、上に挙げた2件との違いってなんなんだろう…と思ってしまいます。
だって怖さで言ったら、自宅に来られたり、元同僚から何度もアプローチされて待ち伏せされて、電話がかかってくる方が怖いじゃないですか?
結局、何のしがらみもなく、容姿に特徴があったから報道されたのか?と思うと、それもなぁ。
それに、報道されていないストーカーの事件なんてコレ以外にもたくさんあるんでしょうに。
しかし、まず「ストーカー」として罪となるかどうかの境目はどうなっているんだろう?と思ってググってみました。
トップで出てきたのは、さすがの警視庁ホームページです。
ア〜クの8項目に分けて説明されているので、読んだこと無い方はご一読ください。
ストーカー規制法
ア つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき
ストーカー規制法 第2条第1項第1号
つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校、その他通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。イ 監視していると告げる行為
ストーカー規制法 第2条第1項第2号
その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。ウ 面会や交際の要求
ストーカー規制法 第2条第1項第3号
面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。エ 乱暴な言動
ストーカー規制法 第2条第1項第4号
著しく粗野又は乱暴な言動をすること。オ 無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS等
ストーカー規制法 第2条第1項第5号
電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。カ 汚物などの送付
ストーカー規制法第2条第1項第6号
汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
キ 名誉を傷つける
ストーカー規制法 第2条第1項第7号
その他の名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。ク 性的しゅう恥心の侵害
ストーカー規制法 第2条第1項第8号
その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置くこと。引用:
これを読むと、グレーゾーンなのはアとウとオかな、と思えます。
例えば、一目姿を見たくて待つ、というのは、これに触れる危険性があります。
ウも「告白ハラスメント」という言葉があるように、「付き合ってください」ということさえ抵触する可能性も。
オは回数制限が書かれていないため、受け手が何回で迷惑に思ったか、と常識で判断されそうですね。
ただオについては、ただ無視をするだけでなく「止めてくれ」と意思表示をしたかどうかも判断基準になると聞いたことがあります。
ちなみに、「ストーカーとして警察から警告を受けましたが、私のどの行動がストーカーに当たるんですか?」と弁護士に質問をしているサイトがありました。
その人の行動は
「好きな人の妻に『妊娠した。離婚しろ』と電話をした」
「好きな人の職場に子供のおもちゃなどを置いた。」
「自宅のポストに脅す手紙を入れた」
「その後一家が引っ越したので後をつけ、『引っ越しおつかれさま』と手紙をポストに入れた」
という、それもうどこからどう見てもホンマモンじゃないですか!という内容でした。
しかも妊娠自体が本当かどうか、その書き込みからは分かりませんでしたが、嘘だったらもっと怖いよう。
しかし、大抵のネット相談で書かれている人たちは、ここまでのことなんてしていません。
2〜3回程お誘いをかけたけど断られた、でもまだ諦められない、とか、
メールでお誘いをかけたけどはぐらかされた、とか
その程度のことでも「ストーカーだと思われる!」と第三者が嘲笑っているのがほとんど。
もちろん相手の迷惑になってはいけない、と思いますが、
「迷惑だって言うのも面倒だから、勝手に好意を持つな!」
という価値観でストーカー扱いするのは、ちょっとなんだかなぁと思ってしまいます。
コミュニケーションって、そういう一方的に要求して良いものじゃないのでは?お互いに。
たった一度でも、自宅のポストに手紙が届いてゾッとしたことはあります。
どの程度の行動をされたら怖いか、というのは、相手によっても違います。
中村弘美さんが職場のお問い合わせ欄にまでメッセージを一方的に送り、付き合っている体のメールをし続けたのは、確かに怖かったでしょう。
それが、ニュースにするレベルかどうかはともかくとして。
「相手に怖いと思われる」というのと「面倒だと思われる」のと「ストーカーだと思われる」というのは、別物のような気がしてきました。
ネットで大抵「ストーカー」だと言われている行動は、「相手に面倒だと思われる」レベルのものな気がします。
その判断基準は、上記のストーカー規制法のはずです。
キチンとこれを読まないまま、イメージで「ストーカーだ」と言ってはいけないし、これに該当する行動をされているのに「我慢しなきゃいけない」と思うのは危険だということではないでしょうか?
ストーカー自体を擁護する気はありませんが、ストーカーでは無い人まで叩くのはおかしい、と思っています。
それでも、女性は男性から見たら過剰なくらい、危機感を感じていることは多いです。
そうしなければ、何が起こるか分からないから。
他人を安易に信用して、心身ともに傷つけられたくない。
男性と違い、女性はそういう警戒心を持つように言われて育っています。
ただ、美人は愛想の良い人が多く、ブスほど警戒心が強いっていう世間のイメージもありますが、これはちょっと納得かも…私も結構警戒心が強いので…
都内だと、お店の店員さんに愛想の良い美人さんってよく見かけます。
となると、警戒心も単に「他人に慣れているか?」という基準もあるかも。
吉田秋生の昔のマンガ「河よりも長くゆるやかに」の中に、奔放な女子高生の女の子が見知らぬ男から乱暴をされる話が載っています。
彼女はその時生理中で、ことを成し遂げて偉そうに「初めてだったんだろ」と言う男に「は?」と言い返して、特に心に傷も追わずに立ち去ります。
もちろんそんな女の子は少数派だと思いますが、同じ状況でトラウマを一生抱える女性もいれば、面倒そうに忘れてしまう女性もいるのかもしれません。
どちらにしろ、絶対に起こってはいけないことですが。
これは確実に警察が知ったら「事件」となること。
でも被害者の女性が届け出なかったから、事件にはならない。
そういうレベルのことと、「面倒だと思われた」というレベルでストーカー呼ばわりするのは、やっぱり違うんじゃないのかなぁと思いました。
しかし、ストーカーで報道されるかどうかの境目が「話題になりそうかどうか?」であって「罪の重さ」では無いところが、やっぱり理不尽な気持ちになりますね。