今年も鈴木さんにバレンタインデーのチョコを渡しました。
1回目の時は、伊勢丹のショコラの祭典に出かけ、たくさんの素敵な世界のチョコの中から選んだ白金台のお店のチョコでした。
パッケージが有名なグラフィックデザイナー永井一正さんの絵で、チョコも可愛いウサギさんの形でした。
手渡しすることなんて気恥ずかし上に、呼び出すことも出来ず、社内便を使って届けました。
チョコを渡した時は、鈴木さんには若い彼女がいると思っていたら、そのすぐ後に同僚から
「鈴木さんは秋に彼女と別れた」
と報告されました。
隙間を本気で狙ったようなタイミングだったので、それまでただ憧れていただけのつもりだったのに、本気で意識するようになってしまいました。
お返しにもらったのは動物繋がりということで、可愛い動物達のマカロンがホワイトデーの翌日に机の上に置かれていました。
その後飲みに行った時に携帯番号を交換し、ワクワクしていたら鈴木さんに彼女が出来てしまいました。
翌年はもうバレンタインは渡さなくていいや、と思っていたのですが、ギリギリまで悩んで、直前に渋谷西武のバレンタインコーナーで小さなチョコを買い、ネットであるキャラクターのグッズを買って、封筒にそのキャラクターの絵を描いて鈴木さんの机に置いて渡しました。
社内便をバレンタインに使うのは非常識という相談サイトのコメントを見たので、社内便はやめました。
お返しはホワイトデーから3日過ぎに机の上に置かれていて、その間お返しが無いことに落ち込んで過ごしました。
「気にしないでと言ったけど、ホントに無いなんて」
と本人に言ってしまい、その数時間後にお返しをもらってしまったので、自分の狭量さを反省しました…
お返しは有名店のチョコと、近くの高級スーパーのいかにも義理返し用のチョコの詰め合わせでした。
有名店のチョコは、丁度そのタイミングで退職する同僚への餞別と同じものでした。
ついでに買ったと思われるだろうから、とおまけを何にしようか考えていたら日が過ぎてしまい、慌ててチョコの詰め合わせを足したと言っていましたが、真実は分かりません。
そしてその後飲み会の後にある事があり、以降鈴木さんとは飲みに行っていません。
2回複数人の飲み会に誘ったら予定があると断られたので、もう誘えなくなりました。
今年はもうホントに渡さなくて良いだろうと思ったし、他の同僚へのチョコも用意しませんでした。
でも励ますつもりで、自分のチョコと一緒にネットで注文し、おまけにはダイエットサプリメントを付け、バレンタイン翌日の昼間、鈴木さんが離席中に机の上に置いておきました。
バレンタイン当日と翌日の朝、鈴木さんが
「今年はチョコ無いのかな？」
と思ってくれないかなぁと思いながら、出社した鈴木さんの様子を観察しました。
机の上を見回してはいましたが、それはバレンタイン関係ないことだとも思えます。
意識していたかも？と思う行動もありましたが、単なる偶然かもしれません。
お礼メールは、3回ともタイトルに「社用袋」と書かれていました。
チョコを社用袋に入れて机の上に置いていたのですが、お返しも鈴木さんは社用袋に入れてくれていて、それが恒例となりました。
今年は手を抜かれたことを鈴木さんも分かっていて、短いお礼メールでした。
チョコよりおまけのサプリメントの方に反応していました。
鈴木さんのダイエットがよくネタとなっているのでダイエットサプリメントを渡したのですが、ふと「これってモラハラかも？」と思い、昨夜そんなつもりではないよーというLINEをしました。
その流れで、いつも鈴木さんの心のこもっていない「りょうかいです！」という可愛いいフリした浅い社交辞令の冷たい返信に、ドM心がくすぐられている、と書きました。
冷たく軽くあしらわれると、より好きになる
そういうことは、よくあります。
うまいこと軽く流していると思っていたら、その冷たさが返って相手を惹きつけている、というのは恋だとあるけど、友達や同僚などではありえないことかもしれませんね。
「あなたのその素っ気ない態度が好き」
とか言われたら、嫌いな相手からだと面倒くさいだろうなぁと思います。
私と鈴木さんは、もうこういうのは同僚としてのネタだろ、と私は思っていますが、鈴木さんがどう思っているかは分かりません。
どうせ進展しないんだから、もうネタで良いのです。
面倒なことをしたり言ったりは散々してきて、それでもメールやLINEで私から連絡して雑談することは続いています。
ただもう私から本気の気持ちのこもった行動が無くなっているのは、鈴木さんも分かっているはずです。
段々と、私も鈴木さんに連絡するためのネタ探しをしなくなってきたし、伝えようと思って忘れてしまうこともあります。
でも、優しいフリして冷たい、心のない態度を取る鈴木さんが、同僚達から嫌われているのを見ていると、なんとなく見捨てられなくなります。
今ドラマ「君が心に棲みついた」で向井理がやっている役がサイコパスな男の設定ですが、あそこまで鈴木さんは酷く怖くは無いけど、主人公のキョドコが惹きつけられる気持ちはちょっと分かります。
別に「私なら彼のことを理解してあげられる」とか「支えてあげられる」とか思っているわけではなく、単純に手に入らない不安感が楽しいんです。
本人は苦しいと思っていても、後から思えば、ホラー映画やジェットコースターのようなドキドキした怖さがクセになってるだけ。
うまくいかない復縁や片思いに苦しんでいる人に「馬鹿みたい」とか「幸せになりたいなら、こうすべき」みたいなことを言うのは無駄だなぁとずっと思っていましたが、色々考えた末に
「誰もが恋愛映画を好きなわけではなく、ホラー映画のようなスリルを人生の楽しみにしている人もいる」
と思い至りました。
私の友人は、ブラック極まりない職場で働いていた時は、何だかんだ言って仕事を頑張っていました。
恵まれた環境の職場に移ってからは、心身を壊してしまいました。
ブラックな会社で麻痺してしまうのは、他人から見たら馬鹿みたいでしょうが、平和な会社の方がおかしなイジメなどあるものです。
平和な暇な環境の方が、人はダメになることもある。
心のバランスを取る為に、冷たく軽くあしらう人を好きでい続けてしまうこともあり、その人がその後幸せな平和な愛に溢れた日常を本気で欲しがっているかは分かりません。
私が復縁したいとか執着心に苦しむことについて考えるのは、上から目線で他人にアレコレ言う平和で意地の悪い人よりも魅力があると思うからです。
私は今は鈴木さんと笑顔で楽しく一緒に過ごしたいとは思っていません。
ドキドキハラハラも無くなっていますが、偶に触れる優しいフリして冷たい態度に、刺激をもらっていたと思います。
それが無ければ、職場のストレスだけで心を病んでいたかもしれません。
「君が心に棲みついた」のキョドコも、親からの冷たい態度に苦しんだ過去があるから、そのトラウマを刺激される男に惹かれた。
そういう、実らない恋に苦しむ理由がその人の人生観にあるってことも、あるのかなと思います。
そこに気付いた後に、どうするか？は人それぞれなんでしょうけどね。
ちなみに、ビットコインを買うと値動きの激しさにスリルを味わえ、恋の苦しみよりずっと刺激が味わえますよー。
お陰でこの1ヶ月半、すっかり鈴木さんのことを考える時間が減ってしまいました。
お金を儲けたいとかじゃなく、単純に値動きを予想したりするのが楽しいんですよー。
他のギャンブル程お金がかからず、長期間楽しめる。
恋愛離れが進む時代に仮想通貨がウケているのは、そんな理由かもなぁとも思うのでした。
